真・恋姫†学園 ~お家騒動?~

「しっかしこれまたすごい家だなぁ……」

一刀は改めて自分達のものとなった家を見て溜息をついた
とてつもなく大きかった
二階建ての日本家屋で、部屋数は50を超えていた
しかもそれがひとつひとつ一人が生活するのに十分な大きさなのだ

「そうですか? お城はもっと大きかったとおもうけど……」
となりで桃香が小首を傾げた
「いやね、日本ってのはせまいんだよ
 中国の25分の1くらいだったかな」

「主殿、中国とは何のことですかな?」
「ああ、ごめん言い方が悪かったね、中国ってのは魏・呉・蜀を全部足した感じのものだよ」
「それはなんとまぁ……」
「まぁ、そこいらの話はおいおいするよ。 」


「さて、まずは部屋割りを決めないと」
「あら、それなら一刀は私の隣ね」
「な、なにをいう曹操!! ご、ご主人さまはわ、私の…」
「むぅ、愛紗ちゃん抜け駆けはずるいよ?」
「い、いえ桃香さま、決してそのような……」
「ええい、北郷!! まさか華琳様とほかのやつらを天秤にかけているわけではないだろうな!!」
「あ、あのご主人さま、お世話がしやすいように私たちもお近くの部屋が良いのですが…」
「な!? 何いってんの月、あんなけだものの近くだなんて!!」
「か、一刀……」
「はっ!? 蓮華様を蔑にするとは…北郷貴様!!」
「だめー!! 一刀はシャオの隣!!」
「何を言うチビッコ!! お兄ちゃんは渡さないのだ!!」
「ふふ、主殿は人気であるな」
「まったくだ、さすがはお館様だ」
「………」
「あれぇ、凪ちゃん何我慢しているの?」
「ほんまや。 素直にいぃや、『私も隊長の御傍に!!』ってな」
「な、何を言う!? 私は決してそんなこと……」


大混乱が巻き起こった
一刀はこの瞬間、あたりの空気の温度が上がったのちに極寒まで下がるという奇妙な感覚を覚えた
皆の熱気に当てられた後、殺気に震えたというだけなのだが
あるものは敵意をむき出しに、あるものは笑顔の裏で計略を巡らせ、あるものは周囲のものをからかい、混沌としていた
普段なら諌める立場である桃華や愛紗、華琳、蓮華、雪蓮といった面々がいさめるどころか騒動の中心になってしまっており、収まるところを知らなかった。





「あ、あの皆? どうか穏便に……」
「「ご主人さま(一刀)は黙ってなさい!!」」
「……はい」
事の当人である一刀を全く無視した騒動であった
どれか一つがが立てば他二方がが立たぬという三つ巴の状況で彼に出来ることはただ乾いた笑いを上げるだけだった




途方を暮れた一刀の肩をポンとたたく者がいた
一刀が鈍重な動作で振り返ると、そこには満面の笑みを浮かべた怪人貂蝉がいた
一刀の顔を見るや否やぺろっと舌を出し、右目でウィンクを飛ばしてきた

「きもい」
一刀はそう吐き捨てると肩に置かれた手を振り払った

「やん、クールねぇん♪」
貂蝉は何かを言いかけていたようだったが、肩をすくめただけでそれ以上は何も言わなかった






「あ、あの!! ご主人さま!!」
朱里が袖口を引っ張ってきた

「話し合いではどうにも解決しそうにないですし、雛里ちゃんと一緒に籤を作ったんですがどうでしょうか?
「…籤に印された数の順に希望の部屋を決めていくというのはどうでしょう?」
「ん~まぁそれが一番妥当かな、ありがとう朱里、雛里」

二人の頭をなでて俺は袋に入れられた籤を手に取った
「はわわ~」
「あわわ…」

一刀はそろそろ武器を持ちだしそうな物騒な集団に声をかけた
「みんな、聞いてくれ! 朱里と雛里が籤を作ってきてくれたからそれで決めよう!!」

「うん、それなら公平だね! 朱里ちゃん、雛里ちゃん、御苦労さま」
「そやね~そろそろこの騒動にも疲れてきたし」
「シャオも文句はないわ」
皆が納得しかけた時、ふと冥琳が止めた

「暫し待て、北郷。 少しその籤を見せていただけないかな?」
「え、いいけど……」
その瞬間ちびっこ軍師二人の顔にしまったという色が見えた

「やはり、だな」
「ん? どうしたの?」

「この籤には細工が為されていたのさ。
 よく見てみな、長さが違うだろう?
 上位5個の籤は短くなっている。 つまり取りにくい状態になっている。
 すると袋から出ている籤をとる私たちは自然と取りやすい長い籤、つまり外れ籤を引く確率が高くなってしまうというわけだ」

まったく子供だましもいいところだな、と冥琳はつぶやくと、ちびっこ軍師に目掛けて籤を放った

「はわわ、失敗ですぅ」
「あわわ…まさかこんなに簡単にばれるとは…」
すっかりしぼむ二人であった

「さすがだな、周瑜」
「なぁに、誰もが考え付く手さ」




「なら次はシャオたちの番だね! はい、長さのおんなじ籤よ!」
「うん、確かに。 持ち手のところにも細工はないし、大丈夫かな」

ありがとう、と言って一刀はシャオの頭をなでた
小蓮は子供扱いされていることにむくれながらも、喜色を隠せないでいた

「さて、今度こそ問題はないね。 皆、これを順番に引いていって」
「待ちなさい、一刀。 秋蘭」
「はっ」

心得た、といわんばかりに一礼すると秋蘭は一刀の持つ籤をひょいと奪った

「あっ!!」
小蓮と明命が大仰に反応した
二人がなにやら細工をしていたというのは火を見るより明らかだった
秋蘭は手早く籤を点検していった



「……やはりな。 華琳様」
秋蘭は華琳に向き直ると報告した



「籤自体には細工はありませんでした。 しかし籤の本数が二本、足りなくなっていました。
 その番号は2と4。 おそらく先ほどの二人が隠し持っているでしょうね」
そう言い当てられて二人は隠し持っていた籤を取り出した。

「こんなに早くばれるなんて思わなかったわ」
むぅ、と小蓮はむくれた

「籤を作った人間が1番の籤を引くと違和感があるから1番の籤を抜かなかったこと、それは評価できる。
 しかし籤の本数が少なくなっているのは順に引いていけばすぐにわかることだ。
 そこのところが考えが浅かったな。
 それとも何か策でもあったのか?」

そこまでばれてしまってはしょうがない、といったふうに小蓮は話し始めた
「ええ、この二本の籤は袖口にかくしておいたの。
 籤は袋に入れてあるから、袖まで袋の中に入れてしまえば袖から落ちてきた籤に気づくのは至難の業。
 だから誰も不審に思うことはない、と思ったのだけど……」

「なるほど、だけどその策には致命的な欠陥があるわね」
華琳が策に幾分か感心しながらいった

「籤を作ったものには最後に引かせるに決まっているじゃない、どんな細工をしているのかわからないのだから。
 20本が21本に増えても違和感はないかもしれないけれど、0本が1本に増えたのは誰にだってわかるわ。
 だから、それをやるのなら自分が籤を作ったということにせずに部下に提供させて自分は素知らぬ顔をして真ん中あたりの順番に引くべきだったわね」

なるほどしまった、といった風に唇を尖らせる小蓮
それを愉しそうに華琳は眺めていた






「ではどうする? このままでは収集がつかないが……」
愛紗が流石に疲れた様子で話を元に戻した

「う~ん、一刀さんに決めてもらうのが一番なんだけど……」
そう言うと桃華は一刀の方を向いた
それにならって皆が一刀の方を向いた


「……まぁ、決めきれないでしょうね」
「ああ」
「呉の時に女の子を与えすぎたかしら?」
「英傑、色を好むといってものぉ、限度があるじゃろうに」
「優柔不断ですから」
「た、隊長は皆を平等に……」
「凪、今はそれじゃあかんのや」
「そうだよ~みんなが隣になるってのは無理なんだから」
「一刀、貴方は私のものよね?」
「え、えっとなんだか華琳様が怖いんですけど……」
「あの万年発情男のどこがいいのやら……」





「話が振り出しに戻ったところでちょっといいかしら?」
今まで黙っていた貂蝉が提案した


「別にご主人様の部屋を一つにする必要な無いんじゃないかしら?」

「「「へ?」」」
皆、虚を突かれた表情を浮かべた

「この屋敷はかなり大きめに作られているわ。
 一人一部屋与えても余るくらいだわ。
 さらに、この屋敷は北、東、西の三か所に母屋が分かれていてそれぞれ同じ規模の部屋が並んでいるわ」

多くのものがまだ分からずにキョトンとしている中、何人かは見当がついた様だった
「つまり、国ごとに3個所に分かれて、ご主人様はその3か所すべてに部屋を持つ、ということかしら?」

「ええ、正解よ、紫苑」
「そうなるとどのくらいの周期で交代するのかが問題になるわね。
 一刀の負担が大きくなりすぎるのも考え物だし、どうかしらね、冥琳?」
「そうだな……週ごとに交代でどう?」
冥琳は一刀に同意を求めた

「やってみないとわからないけど……そうでもしないとこの騒動は収まりそうにないし、やってみようか」

ふぅ、これでひと段落つくかなと一刀が思った矢先、騒動は再び再燃した




「ならご主人様の部屋は各母屋の真ん中の部屋だとして……」
「愛紗ちゃん、私は一応貴方達の主だよね? 当然譲ってくれるよね?」
「桃華お姉ちゃんずるいのだ!! いつもは全くそんなこと言わないのにこういうときだけ!!」
「ご主人様、璃々もすっかりなついていることですし、お近くのお部屋に……」
「あぁ!! 子供を使うなんてずるいぞ、紫苑!! わ、私だって、そのごにょごにょ……」
「お姉ちゃんも素直じゃないなぁ~」
「はわわ、どうしましょう」
「あわわ、どうしましょう」
「あ、あの……お世話をする身ですから私たちも近くの部屋の方が……」
「あの内気な月が自分から言った!?」
「ワタシは桃華様の近くならどこでも……」
「むぅ、御館様の御傍にといっても無理じゃろうな。 若さには勝てぬ、か?」
「何を言う、桔梗、眼は死んでおらぬぞ? 主殿を諦めているわけではあるまい?」



「蓮華、小蓮、勿論私に決定権があるわよね?」
「な!? 姉さまは私に王の位を譲ったのですから私に決定権があるでしょう!!」
「むぅーお姉ちゃんたち、お姉ちゃんなんだから我慢するっていう発想はないわけ!?
 シャオはぜ~~~~ったいに譲らないわ!!」
「わ、私は誰の意見を尊重すればいいのだ?」
「思春ちゃん、自分の意見を尊重すればいいんですよ~
 穏はそうしますよ~」



三分割されて小規模にはなったものの一刀争奪戦は三度勃発した
三か所に分かれたにもかかわらず、部屋の場所決めが終わるまではまだまだかかりそうであった



「皆、私が決めるわ。 いいわね?」
「「はっ!!」」


訂正、一か所は何の問題もなく決まりそうだった












これにて一刀家のお家騒動、否、お部屋騒動は終結したのであった、まる



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いやはや、なかなか難しい。
一応ないアイデアを振り絞って考えてみました。
未完成版をアップした時に、軍師のだましあいがあるんじゃないかというコメントをいただいたので、ひらめきましたw



家が豪邸過ぎるのは、キャラ全員を一か所に済ませたかったからです、はい。
本当は三つの家に分けようかなとも考えましたが、三つに家の母屋が分かれている形式でいけばいいんじゃないかと思い、今の状態にしました。
平安時代とかの貴族の家とかと思ってくれれば(苦笑)

思いつくままに書いたので、口調などおかしいところがあるかもしれません。
指摘や感想、お待ちしています~

(未完成版)
一応未完成版を残しておきますね

  • 麗羽達が納得するか心配 -- XOP (2009-04-02 03:19:58)
  • 伯珪はどーなる? -- orz (2009-04-02 13:31:42)
  • 各勢力の部屋配置が気になる。一刀の両隣と向かい側が激戦区だろうから各勢力で勝ち組は三人だけの倍率だしw -- 名無しさん (2009-04-02 15:09:15)
  • 毎回楽しく見せてもらってます。ですが、張三姉妹は? -- zzz (2009-04-02 20:15:53)
  • あと桃香の字が桃華になってます -- zzz (2009-04-02 20:17:32)
  • 自分の書いたコメントを元ネタにしていただけるとは結構うれしいものがありますね。日本家屋とのことですが朱里が天井裏を艶本の隠し場所にしたはいいが、置きすぎて天井崩落なんてことが思い浮かんだ私はバカでしょうか? -- 名無しさん (2009-04-02 23:36:39)
  • このつづきが とても楽しみです どうかつづきをおねがいします -- あきら (2009-04-03 00:34:00)
  • すごい続きが気になる…期待して待ってます -- 名無しさん (2009-04-04 09:14:11)
最終更新:2009年05月22日 14:38